偽装夫婦~御曹司のかりそめ妻への独占欲が止まらない~
病院の近くでお見舞いの品を調達して、病院裏口で待っていると一台のシルバーの高級車が止まる。助手席のパワーウィンドウがゆっくりと降ろされて、中から川久保さんが顔を覗かせた。
「乗ってください」
一度も乗ったことのないような高級車をぼーっと見ていたわたしに、彼が中から助手席の扉を開けてくれた。
「ありがとうございます」
「いや。無理を言って来てもらうのはこちらのほうですから。シートベルト締めてください」
「はい、わかりました。これ、お見舞い買ったんですけれど、おばあ様喜んでくれるでしょうか?」
わたしが川久保さんに袋の中を見せる。彼がほほ笑んだのを見てほっと安心した。
「気を遣わせてしまってすみません。こちらが無理を言ったのに」
川久保さんは車をゆっくりと発進させた。
高級車というのもあるだろうけれど、彼の運転はとても穏やかでそれさえも彼の人柄を表しているように感じた。
ついこの間までは出会ってもいなかった相手の運転する車に乗っているなんて、なんだが不思議。
チラリと運転をする彼の横顔を盗み見ながら、ふとそんなことを考えていた。