冷やし中華が始まる頃には
笹崎に連れてこられたのは、少し高い丘の上に立つ大学だった。

「俺の研究室からかなり見えると思うんだよね。」

そう言ってキャンパスに入る。

「入って大丈夫なの?」
「まだサークルとか研究で残ってる奴らもいるから全然平気。チェック緩いんだ。」

ならは笹崎が通う福祉大学に入るのは初めてだった。
ならの大学に比べると新しく、それでいてコンパクトだった。
笹崎に手を引かれながらグングン進んでいくと、一番奥にある研究棟に着いた。
フェンスの向こうは斜面になっていて、街が一望できる。

「よしよし、ほらここ絶対見えるっしょ。でも誰もいないっていう、すごい絶好のロケーション。」

笹崎が誇らしげに言う。

「わー、夜景綺麗。」
「綺麗なんだよ。俺結構ここから観る景色好き。」

笹崎の笑顔を見て少しドキッとする。

「よし、中入ろう。」
「え。」
「大丈夫大丈夫、襲わない襲わない。え、怖い?俺。」
「いや、完全に私部外者だし、立ち入っていいのかな。」
「いや、バレないバレない。」
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