冷やし中華が始まる頃には
青空マルシェ2
つねに何かしらのイベントを絶えず行なっている中央公園は、相変わらず人で賑わっていた。

お盆明けの週末。

ならはお盆明けにわざわざ1日だけ仕事して、すぐに新幹線に乗って帰ってきていた。

東京から見るとマシだが、夏の太陽は体力をグングン吸い取っていく。

こんな真夏に屋外でイベントだなんて。
時期を考えろ。

そうは思いながらも、このためにわざわざ新幹線の切符を取ったのも確かだ。

入り口のインフォメーション前まで来て、改めて躊躇する。

本当に私は今日ここに来て良かったんだろうか。

大和はなんて思うだろうか。

帰っちゃおうかな。

そう思うものの、新幹線の切符代がチクリと心に刺さる。

大丈夫。
大丈夫。
偶然を装えばいいし、反応が悪かったらそのまま帰ればいい。

会場案内図の立て看板前で、ならは顔を上げる。

白峯窯・・・白峯窯・・・

ん・・・?

ならは、立て看板の右上から左上、斜め右下、とジグザグに文字を探すが見当たらない。

あれ?
もう一度・・・

口元で「はくほうがま・・・」と呟きながら探す。

ない。

もしかして、今年は出店してない・・・?
でも笹崎の情報だから、確かなはず。

ならはゆっくり会場内を見て回ることにした。

手作りのお菓子や漬け物、野菜などが多いが、たまにチラホラと雑貨も並べられている。

白峯窯もありそうなんだけどな。

ならは注意深くゆっくり歩く。

でも、大和がいれば一発で気づくはず。

そう思いながら、ふと前方から声がするのに気づく。
ならは視線を前方に向けた。

そこでは、テントの下にテーブルを並べてワークショップをやっているようだった。
親子連れや女の子たちがちらほら座っている。

チーム・カナタニと書かれたポップな看板が目に入った。
どうやら陶芸体験をしているようだった。

ならはゆっくりそのブースに近づく。

4人の男女が各テーブルについて参加者と向き合う位置に立っていた。
そのうちの1人の男とバッチリ目が合う。
男は「あっ」と言って口をポカンと開けたまま固まる。

ならが歩み寄る。

「久しぶり。」
「久しぶり。えっ、なんで。」

浅く日に焼けた峯岸だった。

「笹崎に同窓会で会って、行ったらって。」
「ああ、あの熱血教師・・・。」
「熱血って・・・」

ならは思わず吹き出す。

峯岸は座ってる参加者の方に目をやる。

「ごめん。あ、もう帰る?」

ならは首を振る。
峯岸は声のボリュームを下げる。

「昼休憩まで待ってられる?」
「うん、いいよ。」
「ごめん、またその時連絡する。」

峯岸は申し訳なさそうに「じゃ」と手を挙げると、すぐに表情を切り替えて目の前の仕事にあたった。

どう思われるのか構えていたならとは裏腹に、大和は意外と普通だった。

ずっとずっと私の心の奥で凍っていた思い出が、一瞬にして溶けたようだ。

大和は私に何を思ったかな。

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