冷やし中華が始まる頃には
「大和、元気だよ。」

笹崎はまっすぐならの方を見て言った。

「そっか、よかった。」

ならもそう言ってビールを一口飲む。

「今の大和、もう気にならないの?」

笹崎がならに向かって問いかける。

気になるもならないも、もう3年も前に一方的に振られてるし。
きっと彼は私のいない自分の人生を歩んでる。
そこに私が入り込む隙なんてないんだろう。

「今元気で頑張ってるなら、それでいいや。」

ならは笑顔を繕って嘘で答えた。

「未練とかはもうない・・・?」
「未練・・・?」

ならは視線を笹崎から外した。

未練がないわけない。
この3年間、大和のことばかり考えてた。

「未練たっぷりだな。」

笹崎がいたずらな笑みで言う。

「ちゃんと話し合ってみれば。」
「もう無理だよ。」

ならがそう言うと、笹崎がスマホを手に取る。

「これ」と画面をならの前に差し出す。
そこには、「青空マルシェ」の文字。

ここに?
行けと?

ならは笹崎に視線を向ける。

「今週末だけど、都合つくなら行ってくれば。」

笹崎が言った。

「今さらだよ。だって、私振られてるんだよ?」

ならの言葉に、笹崎が「でもね」と返す。

「本当は俺が言っちゃダメなんだろうけど、ちゃんと大和の気持ち知った方がいいよ。」
「どういうこと?」
「んー、これ以上は言えねーな。」

笹崎は意地悪な笑みを浮かべる。

青空マルシェか。

初めて行った時も暑かったな。

ならは一次会で同窓会を後にした。
店を出たところでえみと別れる。
えみはこの後二次会にも行くらしい。

笹崎はとっくに主要メンバーで二次会のお店に向かっていた。

ならは週末の青空マルシェのことを考えながら家に帰った。
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