冷やし中華が始まる頃には
「ずっと俺ね、金谷焼も陶芸自体も、自分の中でしっくりきてなかった。でも、最近はやっと納得のいく陶芸ができてる。自分の陶芸ができてる。」

峯岸はそこまで言うと、ならに向かい合って立ち、ジッと目を見つめた。

一瞬、シンと静かになる。

静かに「それでさ」と峯岸は切り出した。

「やっぱり俺の人生にはならにいてほしい。」

「ーーーー」

「俺、ならのこと、大好きだよ。」


突然のことに、ならの口からは何も出てこない。

峯岸がならの手を取る。

「もう一度、やり直せないかな。俺たち。」

俯いているならの口から震える声が溢れた。

「・・・ほんとに、勝手過ぎる・・・」
「え?」
「ほんとに、勝手過ぎるよ。」

ならは顔を上げて峯岸の目を見つめる。と、ならの瞳からボロボロと涙がこぼれ落ちた。

「一方的に別れを切り出してきたくせに、人の名前使って作品作ってさ・・・」

峯岸は「ごめん」と言いながら笑う。

「なんで笑うの?」
「いや、まあ確かにそうだから。」

峯岸はそう言って、ならを大きく包むように抱きしめた。

本当に、ずるい。

峯岸がならの頭を軽く押さえながら、またも「ごめん」と言う。

ならは静かに峯岸の胸で頷く。

「好き。」

峯岸はならの耳元で優しく言った。

ならも峯岸の背中に腕を回す。

「私もずっと好きだよ。」

ならの言葉を聞いて、峯岸がならの顔を覗き込む。

2人は少しの間見つめ合い、そして優しく長いキスをした。
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