キライが好きに変わったら、恋のリボン結んでね。
 言い訳を必死に考えてみるけれど、いい案は浮かばない。ガックリと肩を落としていたら、隣で宙斗くんが立ち上がる。

「デッサンはあとでやる。それよりも、こんな場所でお前をひとりにするほうが不安だ」

「不安……?」

 宙斗くんは、なんの心配をしてくれてるの?

 不思議に思って思考を巡らせていると、視界に行きかう大勢の人の姿が入ってきた。そこでふと、ひらめく。

「大丈夫だよ、この青色のパラソルを目印に帰ってくるから」

 きっと、私が迷子になるんじゃないかって思ってるんだろう。そんな心配をしてくれるなんて、宙斗くんは優しんだなぁ。

 任せて! とばかりに胸を張って笑って見せると、宙斗くんは開いた口が塞がらないというふうに唖然としていた。

「お前……そういう方面では鈍感なのか」

「どういうこと?」

「もういい、とりあえずこれ着ろ」

 そう言って差し出されたのは、宙斗くんのパーカー。それを条件反射で受け取ると、私はパーカーから目を離して宙斗くんを見上げる。

「私、自分のパーカーあるよ?」

「いいんだよ、俺ので。そのほうが体が隠れる」

「は、はぁ」

 宙斗くんの目が怖いので、言われるがまま袖を通す。だけどパーカーが大きくて袖から手は出ないし、せっかくの水着も太ももまで隠れてしまう。

「やっぱり、ぶかぶかすぎない?」

    

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