キライが好きに変わったら、恋のリボン結んでね。
「宙斗くん、今まで傷つけてごめんなさい。離れててもずっと……」

 ――きみが好きだよ。

 言いかけた言葉は声にはならずに、代わりに涙が頬を伝っていく。偽りでもそばにいられて、私は幸せだったんだと思う。きみの想いと私の想いが比例していなくても、拒絶されて胸が痛んでも、たった一回の笑顔が見られるだけで私の心は満たされていた。

「ありがとう、サヨナラ」

 頑張って笑顔で言ってみせた。そんな私に息を詰まらせた宙斗くんが「飛鳥……」と名前を呼んで、こちらに足を踏み出した瞬間――。

「あんな自分勝手な男、やめときゃいいのに」

「えっ」

 声が聞こえた瞬間に、うしろからグイッと引き寄せられる。振り返れば、そこには息を切らして立つ楓の姿があった。

「か、楓? どうしてここに……」

「お前のことを追いかけてきたんだよ。ったく、足早すぎだろ」

 そっか、私のこと心配して走ってきてくれたんだ。私、いい親友をもったな……。

 じんわりと胸が温かくなり、心が震える。気が緩んで泣いてしまいそうになったけれど、宙斗くんの前だから我慢した。

「おい宙斗」

 楓は鋭い視線を宙斗くんに向け、私を抱きしめる腕に力を込める。

    

< 155 / 178 >

この作品をシェア

pagetop