キライが好きに変わったら、恋のリボン結んでね。
「あのスケッチブックは、あいつが勝手に奪ったんだよ。飛鳥は返せって言ったけど、返してもらえなかったんだ」

 なにがあったのか、私の代わりに楓が話してくれる。半信半疑の顔で耳を傾ける宙斗くんに、楓は続けた。

「なんのデザインかは知らねぇけど、お前の絵を見ながらこいつ、すげー幸せな顔してた」

切なさの滲んだ顔で楓は言うと、はぁーっと深いため息をつく。

「飛鳥はお前の大事なものをさらして、笑いにするようなヤツじゃない。それがわかんないなら、こいつはやれない」

 やれないって……楓?

 どういう意味かを問うように彼を見上げると、視線がパッタリと合った。

「今の発言に関して説明はしねぇーからな、鈍感女」

「楓、ひどい……」

「お前のほうがひどいっつーの、俺の気持ちも知らないでさ」

「え……?」

 楓はやっぱり、悲しそうな顔をしてる。胸が締めつけられて、かけるべき言葉を見つけられなかった。というより、なにも言ってはいけない気がする。彼が強がっているうちは、特に。

「つーわけで、お前がこいつを傷つけるなら……。もう二度と近づかせないし、言葉も交わさせない」

「くっ……飛鳥!」

    

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