キライが好きに変わったら、恋のリボン結んでね。
 女子たちに話しかけられる宙斗くんは昔のように拒否反応を見せることはなく、ただ戸惑っている。その表情はどこかうれしそうで、私はこっそり微笑んだ。

「チッ、結局アイツは人気者のままかよ」

「本当だよな。いいところばっか、もっていきやがって」

 さっき宙斗くんを馬鹿にした男子たちが、悪態をつきながら席へと戻っていく。私たちの横を通った瞬間、楓がむんずとその手首を掴んだ。

「よう、ブサメン野郎」

 ちょっとまって楓さん!? 私の耳がおかしくなければ、聞くに堪えない悪口を言っていた気がする。

「は? 離せよ」

 キッと睨む男子たちに、楓は怯むことなく不敵に笑う。

「ひがんで宙斗を陥れようとか、クソ笑えるわ」

「本当よね」

 楓に同意の声を上げたのは、美代だった。美代は楓の座っている椅子の背もたれに寄りかかって、男子たちの顔を見比べるとニッコリ笑った。

「あたしの親友泣かしたら、男の大事なもの切り落とすから」

 その発言のあと、男子たちからは「ひっ」と悲鳴が上がり、逃げるように席に戻っていく。それを見送った美代と楓は顔を見合わせて、軽くハイタッチした。

「もう、ふたりとも……」

 いつもならここで叱るところだけれど、ふたりの優しさだと知っているから注意はしない。私もスカッとしてしまったので、感謝してる。

「大好き」

    

< 161 / 178 >

この作品をシェア

pagetop