キライが好きに変わったら、恋のリボン結んでね。
「このリボンが、これから私たちを繋ぐ手の代わりです」

 これなら間接的に手を繋げるから、我ながら、いい案だと思う。なんて便利なんだ、【Hiro】のリボンは。

「お前、それ……」

 リボンを凝視している宙斗くんに、私はニッと笑ってみせた。

「私のお気に入りのリボンなの」

 そう言った瞬間、彼の目がみるみる見開かれる。

 宙斗くんは知らないんだろうな。これが、私に恋のきっかけをくれた宝物だってこと。

「初めの一歩、まずはリボンで握手しよう?」

 私はリボンの端を持って、宙斗くんに手を突き出す。

「おい! 勝手に近づくなよ」

「これくらい頑張ってよ! 練習だと思って!」

 持ったリボンを揺らせば、彼は「ぐっ」と呻き声を上げて恐る恐るリボンの端を掴む。

「これからよろしくね、宙斗くん」

「……早見、俺はよろしくはしたくないんだが……」

 早見って……。私の名前、憶えていてくれたんだ。ずっと同じクラスだったのに、一度も呼ばれたことがない名前。好きな人に知っていてもらえることって、こんなにもうれしいんだな。でも、ここはニセとはいえ恋人同士なんだから……。

「飛鳥、私のことはそう呼んで?」

「なんでだよ」

 げんなりとした顔で、宙斗くんは不満そうに言う。

    

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