キライが好きに変わったら、恋のリボン結んでね。
「でも、最近は女遊びしてないわよね、楓」

 美代の言う通りだ。高校入って一ヶ月くらいだったかな。すでに楓はプレイボーイとして名を馳せていた。放課後は女の子たちとカラオケに行ったりして遊んでいたのに、一年生の後期あたりからはパッタリとなくなった気がする。最近は放課後に一緒に遊んでくれるし、付き合いがいい。

「うーん、でも再開するかも」

 楓は若干、声に不機嫌さを滲ませる。

「え、なんで?」

「憂さ晴らし」

 聞き返すと、楓に恨みがましく睨まれた。

 え、なんでそんな目で睨まれないといけないの? 私、なにか怒らせるようなこと言ったっけ。

 思考を巡らせてみても思い当たる節はなく、私はポカンと楓の顔を見つめる。

「鈍感ね、飛鳥は」

「うん?」

「まあ、それが飛鳥の可愛いところよ」

 もう、楓は勝手にふてくされるし、美代も教えてくれないし。本当、ふたりともなんの話をしてるの?

 首を傾げながら、ふと視線をショーウインドウへと向ける。

「え……」

 私が見たのは、女の子向けのファンシーな雑貨店。ウサギの人形やら、お花の髪飾りやらが売っているお店で、私も何度か入ったことがある。

「いやいや、見間違えだよ」

 私は頭を振って、何度もそう自分に言い聞かせた。

    

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