キライが好きに変わったら、恋のリボン結んでね。
 せっかく仲良くなれても、彼との距離はふとした瞬間に追いつけないほど遠くなる。私はまだきみの内側に入れてはもらえないだって、寂しくてしかたなくなる。

「私が……期待しすぎなんだよね、きっと」

 彼の特別になれたかもしれない、他の女の子よりは近い場所にいるって、勝手に思い込んでた。実際はそうじゃないんだ。私が偽装彼女だから宙斗くんは頑張って一緒にいてくれているだけで、それを心の距離が近づいたなんて勘違いしてた。だから宙斗くんは悪くない。でも、やっぱり辛いな。

「いつまでもここにいたって仕方ないし……帰ろう」

 私はずぶ濡れになるのを覚悟して、外靴に履き替えると昇降口の前に立つ。その雨の中、足を踏み出そうとしたとき――。

「飛鳥!」

 うしろから、腕を引かれた。その反動で振り返ると、視界をよぎる黒髪。目を見開いて息を呑む、私の視線の先にいたのは……。

「宙斗くん!?」

「この雨のまま、そのまま飛び出すヤツがあるか」

 赤い顔でそっぽ向きながら、恥ずかしそうに言う宙斗くんがそこにいた。しかも彼は今、私の腕を掴んでいる。

「どうして、ここに?」

 もうとっくに、帰ってると思ってた。だって、普通の下校時刻からは一時間半も経っているから。

「そんなん偶然――」

    

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