キライが好きに変わったら、恋のリボン結んでね。
 ふと、美代がスマホの画面を見つめながら呟く。

「なになに? 彼氏さん?」

 テーブルに身を乗り出して尋ねると、美代がスマホの画面を見せてくれる。そこには【月曜日の男:土日、二泊三日でホテルに来ない?】と書かれており、私は思わず「えええっ」と叫んでしまった。店内の視線が集まり、楓はメニュー表で私の頭を叩く。

「うるさいぞ」

「ううっ、ごめん。でも、そのっ、ホテルって……」

 いかがわしい、あのホテル……だよね?

 想像して、私はボンッと音が鳴る勢いで顔を赤くする。

「美代って、大人だなぁ」

 最近の子は早いっていうけど、私なんていろいろ未経験だし。ふたりともぜんぜん動揺していないところを見ると、楓と美代は確実に大人の階段を上っている。私がひとりで赤面しながらアワアワしていると、ふたりがニヤニヤしているのに気づいた。

「うぶ子ちゃんだよな」

「飛鳥はそのままでいてね」

 ふたりの生暖かい眼差しに、私は頬をぷっくり膨らませる。

「もうっ、ふたりとも馬鹿にして!」

 怒ったように叫べば、ふたりが吹きだす。なんたる屈辱、私の親友は結託して私をからかうからひどい。

「あのね、そっちのホテルじゃないのよ」

 ふてくされる私を見かねてか、美代が説明してくれる。

    

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