偽のモテ期にご注意を
企画が動き出す前の準備段階のお陰で、会議は多いが、この一週間は残業も少なめだったのに、精神的に疲れきっていた。
松本にはカードキーの所為で、相手が高級マンションに住んでいる事がバレ「お前は騙されている」と言われ、「遊ばれているから止めておけ」と何度も釘をさされた。
三石と草尾には好奇心の目を向けられ、隙あらば聞こうとする態度が見て取れて、隙を見せないように振舞っていた。
そして社内には付き合っている男が居るらしいという情報が瞬く間に広がり、好奇の目で見られたり、直接聞いてきたりされた。
『勘弁してよね・・・。仕事にならないわ』
やっと訪れた金曜日に重い足取りで琥珀に向う。
迷惑をかけてから一週間、まだ行き辛いがここで行かないと、多分足が遠のく。
そう思い、意を決してお詫びの品を持って向かう。
見慣れたドアから店内に入ると、何時もと同じようにマスターが笑顔で迎えてくれた。
「その節は本当にすみませんでした!」
挨拶もそこそこに誤って、用意した有名店のチョコレートを差し出す。