水性のピリオド.


やっぱり、ちょっとどころじゃなくて、かなり回りくどいことをひたかもしれない。

これじゃあ、伝わらないに決まってる。

数十分前のわたしは、えらそうに鼻を高くしていたのだけど、その鼻をぺちゃっと潰してやりたい。


「わたしの好きは、油性じゃないよ」


サスケの手をきゅっと握る。

昨夜クリームを塗ったからかいつもよりぷにぷにもっちりな肉球に、マッサージするみたいに指を沈める。


腕のなかのサスケを見ると、ぺろっと舌を出してわたしとはるを見比べていた。


「な……」


「なんですか、じゃないよ。わかってるでしょ」


怒っているわけではないし、もうはやく追い返そうって気もない。

はるが納得するまで、朝までここで話していてもいいと思ってる。


予期せず強くなった語気に、はるの顔がわずかに強ばる。


「ほ、ほかに、好きな人ができたの?」


はるは敬語が崩れると口調が幼くなる。

心なしか声のトーンも高くなって、そういうところ、本当にずるい。


振り幅がコントロールできないくらいに狼狽える姿を馬鹿になんてしないけど、それは狡いよって言いたい。

別れようって言ったことに、心が痛まないわけじゃないんだから。


ゆっくりと首を横に振る。

事実にはちゃんと、首を縦に振ろう。

ちがうって神さまに誓えることには、首を横に振ろう。


誠心誠意ってたぶんこういうことじゃないけど、わたしとはるのルールしか敷かれていないんだ、ここには。


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