水性のピリオド.
季節が巡って一年が経つころ、進学先に合わせて引っ越した住所に実家から転送された荷物が届いた。
卒業した高校から、大塚先生の名前で届いた荷物を開けると、いつか渡したアルバムが入っていた。
まさか一年越しに返されるとは思わなくて、ページを捲ってみる。
「これ……」
どの写真も、たぶんわたしが撮った写真と同じアングルで撮影されていた。
大塚先生もわたしも写っていない写真。
右下には、わたしが卒業してから一年の日付。
ずっと、一年間、はるはあのアルバムを追いかけてくれていた。
最後のページには、小さなメッセージが残されていた。
名前だけ園芸部の部長として。
わたしが卒業してから園芸部は名前だけじゃなくなって、荒れ放題で枯れていたビオトープの管理も任されるようになっていたことと、それから。
「……ばかだなあ」
たったの一言、その一言は。
ボールペンの字ではなくて、消えない油性のペンで大きく書かれていた。
【⠀好きです。 】
涙を落としても滲まない、力強い文字だ。
連絡先も、進学先も、これからのことも何も書かれていないから、はるに返事のしようがない。
一年も経てば、周りからははるが薄れていく。
最初は杏ちゃんと叶人くんに詰め寄られて、なんでなんでどうしてって毎日聞かれたものだけど、今でははるの名前が出てくることがない。
終わりにしようって打ったピリオドを今更指先で擦ったって遅いんだ。