ただずっと、君が好き
不良が本気で誰かを睨むと、人を殺せると思うんだ。


俺はスマホの操作をしてるフリをして、なるべく天形の目を見ないようにする。


「別れたんだよ。今日」
「いや、なんで。昨日俺に喧嘩売って来たくせに」
「ねー」


天形の怒りを適当に流しながら、ひなたとやり取りを続ける。


「矢野。誤魔化さずにちゃんと説明しろよ」


たしかに、ひなたを想う天形には、必要か。


「……突っ走りすぎたなーと思っただけ。今の俺じゃ、天形が望むような未来にはできないんだよ」


あえて、ひなたを幸せにはできないと言わなかった。


俺の言う意味が伝わらなかったのか、それとも自分の望む未来と言われたのが恥ずかしくて声が出ないのか、天形は言い返してこなくなった。


それ以上会話が続かなくなり、お互いに黙ってしまった。


ちなみに、ひなたは天形に会いたくないとメールを送って来た。


俺は天形とは別の壁に体重を預けながら座る。


「バカが二人……」


そしてため息とともに吐き出した。


「なんか言ったか?」
「……別に」


一旦画面から目を離し、空を見上げる。


お互いに好きで、両想いなのに、どうしてここまでこじれているんだ、この二人。


こじらせたのは俺か?


「……めんどくさ」


考えるのも、二人の関係も。
もう、疲れた。


一度俺のせいで壊してしまったのなら、俺が取り持ってもいいんじゃないか。


そう思って、俺は立ち上がった。


「天形、また先生呼ばれないように隠れて待ってて。ひなた呼んでくる」
「え……は!?」
「まだ帰らないってことは、ひなたにどうしても伝えたいんだろ?このままじゃ埒が明かない」


俺は戸惑う天形を置いて、校舎に戻った。
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