ただずっと、君が好き

「また天形(あまがた)の話してんの？」
「聖(ひじり)！おはよう」


それは幼なじみの矢野聖だった。


聖はクラスの中心だったり生徒会だったりと、リーダー的なことをこなすしっかり者。
いろんな人に信頼されてるから、自慢の幼なじみだ。


「おはよ、ひなた」


朝だっていうのに、聖は不満そうな顔をしている。


「聖、夏休みつまらなかったの？それとも、学校が嫌だ？」


すると、沙奈ちゃんが吹き出した。
聖は声を殺して笑う沙奈ちゃんを睨んでるけど、私はその理由がわからなかった。


「ひなたちゃんは鈍感だねえ」


……ますますわかりません。


「有川、あまり余計なこと言わないで」
「意外とこれで気付くかも？」
「いいから」


私のわからない話をしないでほしい。


そう思った瞬間、教室の騒がしさが増した。


「人気者が登校してきたか。にしても、あれだけ笑顔振りまいて疲れないのかな」


沙奈ちゃんは廊下を見て呟いた。


「辛らつだね、沙奈ちゃん……」
「有川は近江(おうみ)が嫌いなのか？」


沙奈ちゃんは聖の顔を見て、片方の口角を上げた。
まるで、彼のことが大嫌いだと言わんばかりに。


「あの作り笑いするやつのどこがいい？」
「近江君のあれって作り笑いなの？」


私はそんな風には見えない。
爽やかな、素敵な笑顔だと思う。


「……ひなたちゃんは初恋君以外興味ないもんね」