さよなら、センセイ
番外編

同窓会



「では、再会を祝して…カンパイ!」

都内の某居酒屋。
光英学院、元水泳部で同学年のメンバーが集まっていた。

もともと、男子五人、女子四人のメンバーだったが、今日は男が四人、女子は立花綺羅一人が参加していた。

皆は年に一度は集まっているようだったが、ヒロが参加したのは初めてだ。

「あれ?女の子は綺羅だけ?」

少し遅れて参加したヒロが尋ねた。

「地方の実家に戻ってたり、結婚して妊娠中だったり。
なかなか、全員が集まるのは難しいよ。

それより。

久しぶりだなぁ、丹下!
来てくれて嬉しいよ!」

高校卒業以来の懐かしいメンツに、ヒロにも笑みがこぼれる。

「ずっと来たかったんだけど、なかなか都合が合わなくて。ごめん」


「いやぁ、丹下。お前、マジでスゲェな。
俺、お前をテレビや雑誌で見かける度に、友だちなんだって、自慢してるよ」


「俺も、俺も!
就活の時、あの丹下と一緒に部活してましたって言ったら話盛り上がってさ。
今の会社、入れたのは、実は丹下のおかげなんだぜ〜」


酒が進み、皆、饒舌になってくる。


職種もバラバラ。
仕事の愚痴も、飛び出してくる。


「まぁ、丹下は別格として、皆、どれくらいもらってる?」

みんなは口々に収入を明かす。

「綺羅、スゲェな。
そんなにもらってるんだ〜」

「でも、今は貯めてるの。
彼氏と、結婚もしたいし」

「ヒュゥー結婚かぁ!
結婚式には、呼べよ!余興もしてやるぞ」

綺羅は笑って酒を口に運ぶ。

「…?綺羅。なんか浮かない顔だな、どうかしたか?」

いつもの底抜けに明るい綺羅らしくない。
ヒロは心配になって声をかける。

「あ、うん。
みんな、すっかり立派に社会人してるなぁって。

実はさ、私の彼氏、最初は私と同じ職場にいたんだけど、上司と揉めて辞めちゃて。
それから仕事しないで一日中家でゲームしてる」

「おいおい、綺羅。
そんな男、やめとけよ」

「わかってるんだけどさ…

あぁ、こんな時、相談したいな、先生に。

大学でもお世話になった先生はいたけど、やっぱり私にとって一番の先生は、めぐみ先生なんだ。

めぐみ先生ならきっと、私に最高のアドバイスをくれるんじゃないかって思っちゃう。

高校卒業するとき、先生の連絡先聞いておけば良かったって何度も後悔した」


「あ、それ、わかる!
俺も、若月先生が一番かも」

恵の名前が出て、ヒロはどきりとする。

皆、恵を神格化しているように持ち上げるものだから…

うちにいる、と言える状況じゃなかった。


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