さよなら、センセイ
恵の絶叫と同時に玄関のドアが勢いよく開いた。
「ヒデっ!何やってんだよっ!」
ヒロは飛び込んでくるなり、恵の体の上に乗っていた秀則を殴り飛ばす。
「なるほど、王子様登場って訳か」
秀則は唇を切ったらしく、口の端から血が出ていた。
ヒロは、呆然と床に横たわる無惨な姿の恵を優しく抱き起こし、ぎゅっと抱きしめた。
「ヒデ、俺のことが嫌いなら俺を攻撃しろよ。
恵に手を出すな」
「ヒロ。このオレにそんなこと言っていいのか?学校にお前らのこと、バラすぞ」
秀則の切り札、“バラす”。だが、ヒロは全く動じない。
「言えるもんか。
ヒデが何より大切にしてる丹下の名にも、久坂議員の名にもキズがつくぞ。
出ていけよ、ヒデ。
こんなことしやがって…もう、兄だなんて思わないからな‼︎ 」
恵が見たこともないほどの怒りを露わにしたヒロ。
「オレは、はなっからヒロを弟なんて思ってないさ。
オレにとって、お前はただ邪魔な存在。
蹴落としてやる」
秀則は身だしなみを整えて、何ごとも、なかったように、さらりと恵の部屋から出て行った。