さよなら、センセイ
11.好きな人

冬休みに入ると、恵はすぐに地元へ帰省した。
東京に居ればクリスマスやお正月といったイベントを好きな人と過ごしたくなる。
独りは辛かった。


久しぶりの実家。
両親は相変わらずだが、少しずつ歳をとっているのがわかる。
出来ることなら恵にずっと近くにいてほしい。
そんな素振りが一層強くなっている。


「恵、こっちさ戻ったついでに見合いせんか?ちょうど、えぇ話があるんじゃ。
開業医の息子さんで歳は30。今は東京の大学病院におるが、いずれ親父の病院継いでこっちさ戻って来ると言うておる」

「…ごめん、お母ちゃん。前にも言うたが、好きな人が東京におる」

「んだが、そん人とは結婚せんと、言うておうたが」


高校を卒業すれば、次は大学。あと四年、彼の肩書きは学生のまま。そんなヒロと結婚なんて、無理に決まっている。

「まさか、恵。世間様に顔向けが出来んような相手じゃなかろうね?妻子持ちとか…」

「それは、違う」

「じゃ、一度家さ連れて来い。どんな男か見せてみ」

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