お宿の看板娘でしたが、王妃様の毒見係はじめます。
そうしてマデリンは何度とかジェイコブとやりとりをし、やがて味方につけた。

『その、輝安鉱というのを手に入れてごらん。調査にかかる費用は全部出してやろう。お前がやりたがっている鉱物の発掘のための費用も、研究費も、名目をつけて援助してあげましょう』

その代わり、輝安鉱を何に使用するかは聞かないように、という約束を、ジェイコブはあっさり受けた。
もともと、自分の研究にしか興味のない男だ。

そうして、マデリンはひそかに銀に似た毒を手に入れ、それを使って、カイラを殺害しようとした。
しかし、それを止めたのは兄だ。

『今カイラ殿を殺害したら、疑われるのはお前か俺だ』

『ですが! 私の王妃としての地位を脅かしているのはあの女です』

『いいからこれは預かる。カイラ妃のことは考えているから心配するな』

兄の言うことは、しかして正しかった。
間もなく、カイラ妃は離宮へとその居場所を移したのだ。
その離宮はあまり手入れがされていないことで有名だ。カイラが住み始めた後も、手入れされた形跡はない。
人々の間で、国王の馬鹿げた寵愛は冷めたのではと噂された。

マデリンは安心して、夫の御渡りを待った。けれど、彼は一向にマデリンのもとを訪れない。
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