お宿の看板娘でしたが、王妃様の毒見係はじめます。


物音に、ロザリーは目を開けた。
そしてすぐ目の上にザックの寝顔があることにぎょっとする。
ふたりはソファに並んで座り、肩を貸し合いながら眠っていた。身長差的に、ザックの頭にロザリーが肩を乗せ、その頭の上にザックの頭が乗ることでバランスがとれたのだろう。

「ざ、ザック様?」

「ん……。ああ、ロザリー……。……ロザリー?」 

思わず立ち上がったザックのせいで、毛布が滑り落ちる。
一体だれがかけてくれたのか。足もとに落ちたそれが無くなってはじめて、暖をくれていたことに気づく。

「ああ、起きたのか……起きられましたか、アイザック殿下」

苛立たし気に歩き回っているウィンズは、ふたりに目をやり、初々しく恥ずかしがっている様子にため息をつく。

「なんだかあてられてる気がするのは俺の気のせいですかね。……それにしてもどうしましょうね。陛下が戻ってきてくれないんですよ。このままでは皆に不在がバレてしまうし、ここに来たことがバレればカイラ様への寵愛もばれてしまう」

気の毒に、ウィンズは一睡もしていなさそうだ。

「おふたりとも覚悟を決めたようですし、よろしいのでは?」

どこまでも落ち着いた様子で、彼をなだめに入るのはライザだ。が、ウィンズは食い下がった。

「何のために今までひた隠しにしていたと思っているんです。……マデリン様の執拗な攻撃を忘れたわけではないでしょう」

「でも今はお嬢様もいますし。アイザックお坊ちゃまも十分強くなっておられます」

「私ですか?」

突然水を向けられて驚くロザリーに、ライザはなんてことはないという調子で言った。

「においで毒見ができるのでしょう? もう怖いものなどないではありませんか」

「確かに、そうだな」

ソファに座り直したザックは、ウィンズやライザに気づかれないように、そっと彼女の手を握る。

「君がいれば、俺も無敵だ」

赤面してしまいそうなことを、はっきりと言われて、ロザリーの胸は激しく高鳴った。
けれどそれと同時にとてつもなく幸せな気分も湧いてきていたのだが。

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