お宿の看板娘でしたが、王妃様の毒見係はじめます。
ケネスの中では理屈が通っているのだろうが、ロザリーはザックが心配だ。手の届くところにいてくれたら、少しでも助けたいのに、今のロザリーは王城の中に入ることさえできない。

「どうしたらザック様に会えますか? ちゃんと元気でいるのか心配です。ケネス様、さっさと謝ってザック様のもとに戻ってくださいよー!」

「いずれは戻るつもりでいるよ。でも俺一人で戻ったって意味がないだろうっていう話だよ。そのためにこの一ヶ月、俺は下準備をしていたわけで」

ちょうど連絡が取れなくなってから一ヶ月ほど経つ。手紙が来ないのも、あたり前だったんだ。ザック自身は、手紙を出せないことを伝えていたつもりだったのだから。

「俺は君を社交界デビューさせて、ザックの側まで連れて行くつもりでいる。ザックも覚悟を決めて、大切な人がいるなら懐に入れて守ればいいんだ。中途半端に距離を置いて、失敗した例があるってのに」

「失敗した例?」

「お母上のことだよ。第二王妃カイラ様。彼女が孤独を深めたのは何も国王だけのせいじゃない。ザックが早く一人前になろうとして、彼女の手から離れたからだ」

ロザリーはザックの母親の第二王妃のことはよく知らない。けれど、心を病んで夢遊病になっているという話は聞いていた。
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