アイネクライネ
あなたは、お見舞いで来ていた。

あたしはひとめぼれだったんだよ...
でも、まさかあたしに気づいてくれるなんて

そんな幸せなことがあるなんて
思ってもなかった。

「大丈夫ですか?」

最初の会話がそんなのなんて寂しいけどでもあたしらしいかもしれない。

「すみません...、大丈夫です」

恥ずかしくて素っ気ない言葉しか出なかった

「病室まで送りますよ」

そう言って笑いかけてくれた

「あ、ありがとうございます...」

そう言って手を貸してくれたあなた
大きな手が優しく包んでくれることなんて
なかったあたしにはこそばゆいけど嬉しかった。

あなたは、つまらないあたしを暖かい人だって言ってくれた。
空っぽのあたしにあなたの言葉が降り積もる

満たされる代わりに増える寂しさ
向き合わされる現実。

「…はぁっ...はぁっ!」

痛む胸。息が詰まって吸えない
これが、あたしの病気の一つだった。
胸を押さえてうずくまる
涙がこぼれた。
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