偽装結婚ならお断りです!? ~お見合い相手はイジワル社長~

 でも今回は、最初から最後まで自分で考えたメニューの初めてのお披露目の場ということもあってか、身が引き締まる思いだ。

「マニュアル、マニュアル……」

 パソコンの画面を覗き、新作のマニュアルに目を通す。間違いがないか再度確認し、印刷ボタンをクリックしようとした、その時──私の背後にあるドアが開き、何気に振り向いた。

「相良部長、いるか?」

 クリックしかけた指が止まる。止まるというよりは、動けなくなってしまったというのが正解かもしれない。

 真史さん……。

 二度目の試食会の日から四日。久しぶりに見る真史さんはいつもと変わってないように見えるけれど、その目に私は映っていない。

 それもそのはず。

 『何があった?』と真史さんに問い詰められたあの日の夜から、何度も電話やメールが来ていた。何を今さらと素直に受け入れられない私は、電話もメールも全部無視。メールに関しては開いてもいないから、その内容さえ知らない。いや、知りたくもない。

 私の中では、もう終わったこと。何を話したところで、真史さんに彼女がいるのなら私の出る幕はない。


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