偽装結婚ならお断りです!? ~お見合い相手はイジワル社長~
やれやれと言わんばかりに箱の中を覗き込む。一緒に入っている他の食材を避けてみたけれど、男の子が言う通り、伊勢どりはどこにも見当たらない。慌てて他の箱の中身を確認した。
「どうして……」
やっぱりない。まだ全部、届いていないとか?
いや、今日の納品業者は一社だけのはず。まだ野菜や米が入っている箱は確認してないけれど、そっちに伊勢取りが入っているとは考えにくい。
もしかして──。
嫌な予感が脳裏をよぎる。
急いでキッチンの奥にある事務スペースに移動し、ノートパソコンを起動する。発注ページを開き、昨日の日付をクリックした。
「嘘でしょ……」
伊勢どりの欄の発注数はゼロ。これでは納品されるはずがない。昨日この作業をしたのはパートさん。でも彼女を責めることはできない。これは、ちゃんと確認をしなかった私のミス。仕事に集中できていなかった証拠だ。
デスクに両肘を付き頭を抱えると、重い息を吐いた。
どうしたらいいのか──。
焦っても仕方がない。ここは冷静になって、伊勢どりをどう調達するのか考えよう。
目を伏せ考え始めても、冷静になるどころか気は焦るばかり。ついには頭の中が真っ白になって、にっちもさっちもどうにもならなくなってしまった。
咄嗟に、勢いよく立ち上がる。