夜をこえて朝を想う
第22話

side S

午前中に湊が作ってくれた弁当を持って

大きな公園の広場の芝生に、レジャーシートを広げた。

もう初夏を感じさせる陽気に、木陰でも暑いくらいだ。

木漏れ日で、顔がまばらになった湊が

2人分にしては多い弁当を広げた。

色とりどりの…綺麗な…

芸術作品みたいな。凄いな。…売れるぞ、これ。

「得意じゃないって…」

「うん、得意じゃない。はい。」

そう言って割り箸を渡される。

「頂きます。」

…なるほど

うん

…なるほど

湊を見ると

微妙な顔をゆっくりと上げ、

みるみる眉が下がり出す。

「…見た目が、旨いな。」

「そう、盛り付け、すっごい得意なの。」

「味見は?」

「お腹いっぱいになるから、しない。食べるときの楽しみにしたいの。」

「あ、これ旨い。」

「ウインナー…」

彼女は食が細い。

今度から、味見は俺がしよう。

しかし、綺麗だな。見た目は。

「くっ」

我慢したけど、吹き出した。

「くっくっく…あはは!」

もう、可愛い。可愛い過ぎるな。

あ、ヤバい。

涙目になってそっぽを向く湊に

フォローを入れる。

いや、時間も掛かってたし…

「作ってくれて、嬉しい。」

「得意じゃないって言った!盛り付けが好きなの!」

センスってやつだろうな。

家も、統一感があって、それでいて動線も上手く考えられていた。

独特の感性。

ただ、味付けは…うん、苦手なんだろう。

「あ、ほら、インスタ映えするよ。」

そう言って、携帯で写真を撮った。

…あ、そういや眼鏡イケメンは元気かな。

「そんな、二宮くんみたいな事を。」

ああ、二宮っていうんだ、あのインスタグラマー。

「はは!そうだな。フォローしてやるか?」

「検索したら、出るかな。」

「あー、どうかな?アカ名、本名かも分からんな。」

「公式とかで出てたりして。」

面白半分で検索しようかと

「下の名前は?」

「えーっと…」

湊が、スマホをスクロールして確認…

「あ、孝之。案外、普通の名前。」

「……。」

間違いすぎだよな。



たまたまにしても。

「いた?」

「いや、探してない。」

「なに、それー。」

何だろう、今になって腹が立ってきた。

無性に。

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