夜をこえて朝を想う
次の週になって、ようやく予定の折り合いがついた。

自分から連絡しといて、待たせる。

そんな私にも彼は優しかった。

相変わらず、梓からの連絡は…なかった。

それは、吉良くんも同じだった。

「お久しぶり。って言っても覚えてないかな?ごめんね。時間作って貰って。」

「いや、分かるよ。そっちも…よく分かったね。」

「分かるよ、あの辺から浮いてたもん。」

「浮く?」

「ええ。キラキラと…あ、駄洒落じゃないよ?イケメン過ぎて光ってた。」

うん、以前よりずっと素敵になって…スーツが信じられない程似合ってた。

個室のある店へと行った。

「とりあえず、飲む?」

「1杯だけ。」

「うん。」

お酒が到着するまでに、話し出した。

この、空白だろう期間の話を。

その前に1つ、確認した。

「梓とは…ちゃんと付き合ってたんだよね?」

…私の言葉から察しただろう彼が

「めちゃめちゃ“ちゃんと”付き合ってたよ。」

強めに意思を示して言った。

「だよね。…私も…そう言ってたんだけど。」

「信じてなかった?梓が?」

「信じられなかったんだと思う。」

彼は大きくため息をついた。

「ねぇ、俺ってそんなに…」

「違うの。ごめんなさい。吉良くんのせいじゃ…」

思い返せば、よく会ってくれたなと思う。

3年も前に半年だけ付き合った彼女の…面識のない友達の呼び出しに。

元カノなんて、普通はスルーするかもしれない。

病んでようが、関わりたくないかも。

だけど、彼は…誠実に対応してくれた。

それこそが梓と“ちゃんと”付き合っていた証なのかもしれない。
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