夜をこえて朝を想う
「吉良くんって目立ってたんだよね。あの広いキャンパスでも。…格好いいもん。」

本当、格好いい。

「いつも皆に囲まれて…そして…いつも違う女の子といた。」

「え?ちょっと待って。それって、彼女とは限らないよね?友達だったかも…」

「そうだね。でも、そう見えた。」

私の言葉にため息をついて、肘を付いた姿勢で髪をかき上げた。

彼も、そんなイメージでいつも見られる事、嫌なんだろうな。

「だいたい…1年くらい続いた子が4~5人。全部ちゃんと付き合ってた。…その、被ってたり…その間に他に手出したりしてないよ。」

「うーん…短い。」

「すいませんね。」

「はは、仕方ないよね。モテるだろうし。」

「一応…俺から…」

「はいはい。イケる子に行っただけでしょ?」

「まぁ、そうだけど。…ほぼ初対面なのに言うよね。」

「もうちょっと言っちゃうわね。チャラい。そして、とっかえひっかえ。飽きたらポイ。そう思ってるよ?話した事ない子は。」

「…ひど…」

「そうだね。でも、そんな見た目。飄々として。軽い。でも、そんな派手なタイプばかりでもなかったよね?連れてる子。」

「たぶんね、その…派手なタイプじゃなかった子が彼女だったんだよ。」

「……。そっか…。」

梓を選んだ事に限らず…そういう人なんだろう。吉良くんは。

「梓はね…1回生の頃から好きだったんだ。吉良くんの事。

吉良くんが描いた絵を見てから。

梓は…この人、絶対素敵な人だって。

繊細で…優しい絵だって。

だから、梓も吉良くんの見た目で好きになったわけでもないんだよ?

それからずーっと。…見てるだけ。その、見てるだけで良かったんだって。」

「…そんな前…確かに話した事…なかった。と、思う。」

「あるよ。1回。そらもう、すっごい騒ぎだったから。」

「覚えて…ない。」

「だろうね。そんな、雲の上の人だったんだよ。吉良くん。梓にとって。」

「結局、梓とも半年くらい?」

「ああ、そうだよ。でも…真剣だったよ。俺なりに。」

「そうなんだよね。…じゃあ…」

「その証拠に、俺…梓が最後だよ。」

彼の言葉を頭の中で、反芻した。

最後…最後

え?

3年以上…経って…
< 16 / 146 >

この作品をシェア

pagetop