夜をこえて朝を想う
「人肌恋しい。」

「は?」

「お酒飲むと、多少は人肌恋しくなるでしょ?ならない?」

あー…

駄目だ。通じてない。

ため息をついた。

それ、どころか…

「絶対に、飲むな。」

本当に、飲ませたら駄目だな。

「それから、大人な俺に感謝するんだな。」

と、言った。

あと

「次は止めないから。」

とも。

全く、お手上げだな。

後は任せよう、あのイケメンに。

軽薄で、真面目な彼がやきもきする姿を想像して、笑った。

いつか、寄り添う二人を見てみたいもんだな。

彼女に伝えたのは

芽生えた何かは、早めに摘んでしまおう。

そう、思っての事だった。

もう、誘うつもりもなかったし

彼女も来ないだろう。

それから、彼女の自覚と

彼にも火をつけるため。

早く、向き合えばいい。彼と。

興味…

そうか、単純な興味。

それも一つの好意…か。

彼女が女性である限り。

だけど、俺が興味を持ったのは

ずっと動かなかったあの吉良君(イケメン)が動きたいと思った“きっかけの彼女”

に、興味を持ったから。

だから、それが分かれば…もういい。

美しいということは…それだけで…罪だな。

吉良君も

そして

麗佳も。

ピュア過ぎる彼女には、繊細な彼がお似合いだ。

それにしても、今日は

…寒いな。

一人、だからかもしれないな。

そのうち、誰かと過ごせる寒い日が来るのだろうか。

寒さを感じない、そんな日が。

親心のような暖かい気持ちが溢れる。それでいて、微かな痛みも伴う。

彼女のせいか

彼のせいか

何も考えずに、自分を優先できない恋を

したことの、せいか。

結構…

久しぶりに、惹かれたのにな。

まぁ、それでいい。

そして、これでいい。

次は、遠慮しない。

誰にも。

しばらくは、いいか。

人の事も。

誰にも遠慮せずに、俺個人と向き合える…

そんな人に出逢えるまで。

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