夜をこえて朝を想う
「悪いと思ってる?本当に?」

「思っています。本当に。ごめんなさい。」

はぁーっと大きく息を吐いた。

「俺はね、君の事が好きなんだ。」

穏やかに彼女を見つめる。

「だけど…」

うん、そうだな。

「同じくらい…いや、それ以上かもしれないなぁ…」

優しく続ける。

「彼の事も…好きなんだ。」

「ええ、彼…魅力的だもの。その…異性として見なくても。」

「本当はあのホテル…君より先に彼を誘ったんだけどなぁ。」

彼の方にそっと目をやると、もう姿はなかった。

まぁ、そうだよな。

「えっと…」

「おっと、君に冗談は通じなさそうだね。」

「いえ、絵的に綺麗なので…そういうのもいいと思う。彼、男性は大丈夫だし。」

絵的ってなんだよ。想像するなよ。

「いや、真面目な話ね。ここからは…」

「はい。」

「俺に悪いと思うなら、ちゃんと話すんだね。逃げずに。絶対だ。それが…約束できないなら…俺も、許さない。」

「君が、したことは…彼がしたことに匹敵するか…それより…ひどいかもしれないよ?」

分かってない顔の彼女に続ける。

「男と、一晩…泊まったんだ。君の…意思でね。」

分かったか。

「大人の男女が一晩一緒にいて、何もなかったと…君なら思うかい?」

誤解してる。彼は。

「分からないものなんだよ。相手に聞かないと…何があったのか…なんて。…それに、それを聞いて、嘘をつくような男なのかい?」

「いいえ。いいえ、俊之さん。彼は…ちゃんと向き合ってくれると思います。…私と。」

「もう一度聞くね。君は誰が好きなの?」

「…吉良くんが…好きです。」

「もう、分かるよね。それ、本人に言った?」

「いいえ。」

「俺でさえ、2回も聞いてるのに?」

「部長!本当に部長!」

「ど、どうしたんだよ。何だ、部長って。」

「理想の上司です!」

「…君の上司じゃないけど。」

「部長になるだけあるわ。本当に。部長顔なだけじゃなくて…見た目40に見えるだけの事は…」

「黙ろうか。」

面白い子だ。

あー、でもどうしようかな。

吉良君(あっち)

麗佳(こっち)は、もう大丈夫か。

俺に誰か探そうかと言い出したし。

最後に

「結果、結果出してね。俺、結果主義。」

こう言った俺に

「最善を尽くします。」

彼女はそう言った。

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