破滅エンドまっしぐらの悪役令嬢に転生したので、おいしいご飯を作って暮らします
オスカーは厳しい眼差しをアーシェリアスに返す。


「アルバート卿のことはどうするんだ」


その名に、ザックが首を傾げた。


「アルバート卿?」

「アーシェの許嫁だよ。侯爵家の者だ」


剣を腰のベルトに納めて答えたレオナルドは「まあ、そのアルバートは妹をないがしろにしてミアにいれこんでるようだけどね」と軽蔑を含めた声で続ける。


「許嫁……か。アーシェも、縛られているのか」


ザックは自分の境遇に重ね合わせ、ぼそりと零す。

自然と、自由であるべきだと語っていたアーシェの姿が脳裏に浮かんで、ザックは剣をしまうとオスカーの前に立った。


「少し、いいですか」

「ザック?」


驚くアーシェリアスに、ザックがひとつだけ頷いてみせる。


「俺から話を。アーシェは席を外していてくれ」

「え、ええ……」


ザックの堂々とした振る舞いに、何を話すのだろうと疑問を持ちつつアーシェリアスはいつの間にか眠っているシーゾーと共に屋敷の中へと戻った。

そして、自室に戻ってから十分後。


「アーシェ、OKが出たぞ」

「ええええええっ!?」


報告にやってきたザックの言葉に、アーシェリアスは一瞬耳を疑った。


「いったいどうやって説得したの?」

「まあ……俺の話とか、色々。とにかく、許嫁の方も含めてひとまず問題はなくなった」


俺の話ってどんな話だと、そこがかなり気になったのだが、本人が濁しているので聞いてほしくないのだろうとアーシェリアスは追及をしないことにする。

今はとにかく感謝が先だと、アーシェリアスはザックに抱き付いた。


「ありがとう、ザック!」

「あ、ああ。どう、いたしまして」


ぎこちなく抱き締め返したザックの頬は少しだけ赤く色づいて、それを誤魔化すように「おやき、忘れるなよ」と口にした。


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