お見合い求婚~次期社長の抑えきれない独占愛~
「……私の場合、完全に赤の他人ってわけではなかったので」

「あ? そうなのか?」

「一応、恋愛結婚でありたいと思ってはいるんですけど」

「ふうん」

今度こそ、エレベーターがやってくる。一本逃したおかげで、中は無人だ。乗り込みながら、雉名さんはたいして興味もなさそうにつぶやく。

「じゃあ、ちゃんと恋愛してんだ」

エレベーターが、オフィスのある五階から一階まで下降していく。

途中、乗る人もおらず、辿り着くまで一瞬だった。エレベーターホールを抜け、ビルのエントランスを並んで歩きながら、私は答えあぐねる。

恋愛……してる? うん、してはいる。ちょっと事情が、いろいろと複雑だけれど。

「……はい」

「随分間があったな」

「いろいろありまして」

「乗り気じゃないってことか?」

「そういうわけでもないんですけど」

「どっちだよ」

エントランスの出口にある自動ドアをくぐり、駅へと繋がる歩道を歩きながら、雉名さんはじれったそうな声をあげる。
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