お見合い求婚~次期社長の抑えきれない独占愛~
翌朝出社すると、廊下でバッタリ出くわした雉名さんに指を差されて笑われた。

「あっはっは! 昨日と同じ服って。わかりやすすぎるだろ」

「……それ、オフィスでは絶対に言わないでくださいね。ストール巻いてごまかすつもりなんですから」

予想以上に熟睡してしまったおかげで、家に帰って着替える時間がなくなってしまったのだ。

午前休をするか、同じ服だと誰にも気づかれないことを祈りながら出社するか、悩んだ末に後者を選んだ。

「で。素直になった結果は――って聞くまでもないな」

「……察してください」

「あーそうかー。穂積のモノになっちゃったかー。一足遅かったなー」

「?? なにがです?」

廊下を突き進み、総務側の入口へと向かうと、なぜだか彼もついてくる。

一緒にオフィスの中へ足を踏み入れると、ちょうど目が合った上村さんが「あ」という顔をした。

「また雉名さんと一緒……」

「俺が立花サンと一緒にいちゃ、おかしいのかよ」

ふう、と嘆息して、お決まりのように私の頭をかき交ぜて去っていく。

なに? 雉名さんは、私の頭をなんだと思っているの? 撫でるといいことでもあるのだろうか、どこかのお地蔵さんみたいに。
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