お見合い求婚~次期社長の抑えきれない独占愛~
『来週の金曜日、開けといてくれる?』そう言われたあと、特になんの約束もしないまま今日になっちゃったわけだけど……。

あんな曖昧な約束、きっと穂積さんは忘れちゃっただろうなぁ。

なんとなく気になって、律儀に予定を空けてしまった自分がなんだか情けない。

「……わかりました。番号、お預かりしますね」

「ごめんねー、帰るの遅くなっちゃうよね」

「大丈夫ですよ。そこまで遅くはなりませんし」

私はA4サイズのトートバッグに書類の入った封筒と折り畳み傘を詰め込んで会社を出た。

無人のエレベーターに乗り込んで階数ボタンを押したあと、扉が閉じたのを見計らって、奥の鏡で服装の乱れを確認する。

白いノースリーブブラウスの上に、淡いミントブルーの五分丈カーディガン。ネイビーのフレアスカート。靴はベージュで、上品なリボンがついている。

ヒールがいつもより少し高めのものを選んだのは、そのほうが脚が綺麗に見えるかなぁなんて、ささやかな乙女心だ。
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