お見合い求婚~次期社長の抑えきれない独占愛~
一週間後。資材置き場にパソコンチェアを押していくと、喫煙所から出てきた雉名さんと鉢合わせてしまった。

「あんたさ。俺が言ったこと、覚えてる?」

「す、すみません……」

「で、今度はどの段ボールをとればいいんだ?」

「あれです。お願いします……」

またしても雉名さんは段ボールを軽々と担ぎ上げ、総務のオフィスに向かって歩き出した。

今日は前回よりも歩くペースが遅いのは――もしかして、ニコチンの補給が終わって気分がいいのだろうか?

「なぁ、立花サン」

「は、はい」

突然あらたまって呼びかけられ、しかも「さん」までついていることに驚く。

背筋を伸ばして返事をすると、彼は歩みを緩めることなく、私を視界の端に捉えて切り出した。

「あんた、穂積と付き合ってた?」

「へっ!?」

思いもよらない質問に、思わず声がひっくり返ってしまった。

まさか雉名さんがこんなことを聞いてくるとは思わなかったし、なにより、どうしてそんな疑いを持つに至ったのかが全然わからない。
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