迷惑なんて思ってないよ

誰かがやらなきゃ

謝らなきゃいけない気がしたんだ。俺が何かした訳ではないけれど、犯人がここに来て謝る訳じゃないし、教師も来る訳じゃないし。暴力を振るわれた時に学校にいた誰かが今謝らなきゃ、事が大きくなってしまうような気がして。それを彼女が望んでいないような気がして。

「凛太郎くん、私を見て。・・・ほら、元気だよ?だから、もう謝らないで?」

抱き締めていた男を座らせて立ち上がった柏崎さんはいつもの笑顔で笑っていた。頭を下げた俺を見ていられなかったんだと思う。柏崎さんならきっと、俺は悪くないって言うはずだから。
それでも悪くないんだから顔を上げてと言わないのは俺の気持ちを尊重してくれているから。悪くないと言った所で、俺の気持ちが晴れる訳じゃないと知っているからなんだろう。
俺は今日まで自分が間接的に誰かを傷付けているなんて知らなかった。
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