迷惑なんて思ってないよ
恋人が別れようが別れまいが、何か二人の間に問題があっただけだろうと思っていた。痣が増えていく子にも、何かあったのだろう。大変そうだなとしか思っていなかった。それくらい、周りに関心がなかったんだと思う。
ただ、今日は違った。鬱陶しいと思っていても近付いてくるのなんて本人の勝手だと放っておいた事が原因で彼女が怪我をしてしまった。俺がちゃんと一人一人と向き合っていたらあの日だってあの男と彼女と三人で帰れたかもしれないのに。

「笑わないでくれ・・・。俺は柏崎さんのその笑顔が見たいんじゃない・・・」

その日、俺はそのまま帰った。いや、帰ろうとしたんだ。送っていくかと歳の取った男に訊かれたけれど、送ってもらうほどの距離ではなかったから。そう思っていたんだけど強引に背中を押されて男たちに外へ連れ出された。
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