天然お嬢様の恋はどこまでもマイペース
「本当は、居酒屋さんって初めてです。レモンチューハイは唯一知っているお酒の名前。もちろん飲んだこともありません。ちょっとだけ知ったかぶりをしてみました」
テへへ。と恥ずかしそうな顔をする。

やっぱりかわいいなあ。
22歳には見えない。

結局、全国チェーンの居酒屋の代わり映えしないメニューの中から、焼き鳥や海鮮サラダ、肉じゃがとだし巻き卵を注文した。


「こんな店、嫌だよね」
「いえ、楽しいです。新鮮で」
本心なのか社交辞令なのかはわからないが、爽子さんは運ばれてきたチューハイをためらうことなく口にした。

俺の今夜の作戦はうまくいっているのか、裏目に出ているのか、常にニコニコしている爽子さんの表情からは読み取れない。

「うわー美味しい」
運ばれてきただし巻き卵に爽子さんが声を上げると、
「それ、店で焼いてるんです。特性です」
通りかかった若い男性店員が反応した。
「そうなんですね」
うれしそうに会話を交わす爽子さんと店員に、イラッとする。
一体俺は何をしてるんだ。
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