天然お嬢様の恋はどこまでもマイペース
夏輝と爽子さんを比べたことのなかったが、2人とも同じ女性なんだ。

常に隣を並んで歩き、同士のような存在だった夏輝。
一方、俺の知らない世界を見せてくれる爽子さんは、新鮮で異質な存在だ。
比べようにも比べられない。

今はまだ、爽子さんを女性としてみることはできない。
『友達が1人増えたと思ってくれ』と言われて何度か会っているが、本当にこのままでいいんだろうか。


「だから、そんなに難しい顔するなって。昔の人はお見合いで出会ってそのまま結婚なんて普通だったんだ。お前が嫌でない限り、しばらく流れに身を任せておけばいいんだよ」
「一颯、お前人ごとだと思って」

じゃあお前がやってみろ。と言いかけてやめた。
一颯だって色々抱えているんだ。

俺とともに起業して8年。
今は共同経営者として副社長の肩書きを持っている。
でも、近いうちに親父さんの会社を継がなくてはいけない。
それが起業の時の約束だったから。
『金は出してやる。好きなこともやらせてやる。でも、10年したら帰ってこい』
それが出資の条件だった。
一颯がその条件を飲み親父さんが資金を出してくれたからこそ、今の俺があるんだ。

あと2年。
俺たちはそれまでに結果を残さないといけない。
正直、今の俺には結婚を考える余裕はない。
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