天然お嬢様の恋はどこまでもマイペース
「大丈夫、疲れてない？」
夕方になり、やっと宿に着いたところで爽子に声をかけた。

「全然平気。すごく楽しくて、疲れなんて感じません」
「そう、それは良かった」

美術館を出た後も、近くの海岸を散歩したり、地元作家の工房を覗いて買い物をしたり、一日中よく歩いた。
普段からジムで鍛えている俺はなんともないけれど、爽子にはかなりハードだったんじゃないだろうか。

「荷物を置いたら、大浴場に行ってみようか？」
「はい」

俺たちは今日、泊まりがけで温泉にやって来た。
もっとおしゃれなリゾートホテルもどうかと思ったけれど、爽子のリクエストで温泉宿に決めた。

温泉街に中にある老舗温泉旅館は古いけれど手入れが行き届いていて、何よりも温泉とサービスが売り。

「うわー、見てみて。ここの温泉って泥パックができるんですって」
パンフレットを見ながら、はしゃいでいる爽子。
「すごーい、温泉卵もある」

まるで修学旅行だな。
彼女は男と２人で泊まりで出かけるって事がどういう意味をもつか、分かっているんだろうか？

「ほら、温泉行くよ」
１人盛り上がっている爽子をせかし、２人で大浴場へと向かった。
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