ヴァンパイア†KISS
追うべきだと、心の中で叫ぶ何か。

エマとウルフを繋げたのが、エイダだとしたら。

わたしと彼らを繋ぐのも、エイダなのかもしれない。

わたしはこの黒猫をエイダだと確信するように追い始めた。

黒猫は運命を背負うように、その十字架をけしてその胸から離さず、わたしを待ちながらゆっくりと歩いていく。

このロンドン郊外は、100年前とはすっかり様変わりしていた。

エマたちが住んでいたころの廃れた雰囲気とは違い、しっかりと清潔に整備され、街並みは美しく変わっていた。

古い伝統を大切にしながら、新しく変わってきた街。

もしエマが生きていたらこの変わっていく街をどんな気持ちで見つめていたんだろう。

そんなことを思いながらいつのまにかたどりついたその場所は。

「……あの瓦礫の山だった場所…?」

エイダが住み着いていたという焼け出された瓦礫の山の空き地に、今はすっかり綺麗な住宅が建っていた。

庭で遊ぶ子供達の声が聞こえる。

とても温かい家庭を思わせた。

黒猫は子供達を一瞥すると、さらに歩き始めた。

「あ、エイダ!待って……!」




綺麗な住宅街を抜けて、たどり着いたその場所にどきりとした。

「修道院……!」

真っ白な壁が眩しいその教会は、大きな十字架をその真紅の屋根に掲げながら、広い庭を前に佇んでいた。

黒猫はなんの迷いもないように、その中へと吸い込まれていく。

「エ、エイダ……!」

わたしも運命に吸い寄せられるように、その教会の門をくぐる。







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