ヴァンパイア†KISS

その微笑み

柔らかい陽射しが降り注ぐこの教会の中、わたしは長いすに座り、隣で100年前の物語を語るカルロを見つめていた。

カルロはそこで、話に一区切りをつけるように微笑むと、教会の長いすから立ち上がりわたしを振り返った。

そして、その気高く美しい微笑みをわたしに向ける。

「ウルフ様はこの後、激しい断罪にあいました。ユーゴの妻であったクローディアを死に至らしめた罪……。ユーゴは厳しく追求しました。なぜ、クローディアが死を選んだのか、と。全ては人間の子供をガイアに入れたウルフ様の罪ではないか、と。そして、身の危険を感じたウルフ様は、エマ様を二度とガイアに入れないよう私に指示をしてこの教会に戻し、私をその傍らの隠し地下牢に匿われました」

「なぜ……カルロは地下牢だったの?もともと教会に暮らしていたんでしょう?」

カルロはふっと微笑むと、教会の鐘の音に耳を澄ませながら話し出した。

「私はヴァンパイアになっていたのですから、10歳から永遠に成長しないのです。そんな者が人間の世界に存在すれば、いったいどうなっていたことでしょう」

「あ……!」

「ウルフ様はそれからユーゴによってガイアの一番奥深くに作られた地下牢に入れられ、毎日のようにクローディアの死について、追及を受けられました」

ウルフは両腕を鎖で吊るされた状態で、クローディアの死の真相を語るまでけして地下牢から出ることを許されなかったと、カルロは語る。

クローディアの死の真相。

それは、ウルフがエマを愛していることを避けて通ることはできないものだった。



< 145 / 411 >

この作品をシェア

pagetop