ヴァンパイア†KISS

母なる微笑み

教会を出て暗がりの中をひたすら月に向かって歩くように。

カルロは片手にエイダを抱きながら、わたしの手を引き草原の中を突き進んでいく。

うっすらと雪が積もったその草原はカルロの話に聞いていた100年前の風景と何も変わらないように見えた。

ここを北へ進んで行くと、地下への隠し扉があるはずだと胸をドキドキさせながら付いて行く。

「ここです」

すっかり真っ暗闇になったこの草原でカルロは的確にその場所を指差すと、草むらの中から地下への扉の取っ手を手にとりおもむろに引いた。

100年という重みを持ち上げるように。

カルロは重々しくその扉を開くと、先頭を切って中へと入っていった。

わたしも慌てて真っ暗闇のその小さな穴の中へと入って行く。

中はすぐに階段になっており、人間一人やっと通れるような狭い通路がいつまでも続いていた。

時折、ピチャンピチャンと水の滴るような音が聞こえて来て、薄気味悪さに少し背筋が寒くなるのを感じた。

でも、その暗がりにも徐々に明るい光が差し込んでくるのがわかった。

ああ、この先に部屋、もとい地下牢があるんだと気づいた頃。

カルロはその明るくなった通路の一番奥で立ち止まると、鉄の格子の真ん中にある小さな扉を開け放った。





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