ヴァンパイア†KISS
「その可能性は私も考えました。ですが、この100年間、ウルフ様のヴァンパイアエナジーをどこにも感じることができないのです。100年前、人間たちの渦の中へと自ら向かっていかれたあの日から……」

寂しげな笑顔のカルロは十字架をもう一度手に取ると、

「ウルフ様のヴァンパイアエナジーを感じることができるのは、この十字架からだけです。きっとこの十字架に全ての想いを残されていったのでしょう。この十字架はそのおかげで今でもこうして当時の美しさを保っています」

そう言ってカルロは再び喜びの笑顔を見せた。

「カレン、ここに来てくれてありがとう。ウルフ様もきっと喜んでおられます」

「…うん」

わたしは100年の激動の想いを抱えるカルロのそれでも澄んだ微笑に、どうしようもなく胸が詰まるほどの感動で何も言えずただ涙を流した。

「カレン、笑ってください。人間は、不幸な時には笑えない。ですが、不幸な時だからこそ、人間は笑わなきゃいけない時もあります。エイダと私のように微笑むのです。そうすれば幸福はまた必ず訪れます」

カルロの微笑みは気高いのに、とても澄んでいて、それだけでわたしの心を癒してくれた。

わたしは涙を両手で力強く拭くと、カルロに向かって微笑んだ。

「ありがとう。やはりあなたはエマ様とウルフ様の血を最も濃く受け継がれたお子です。あなたならきっとエマ様を甦らせることができるかもしれない。一緒に来ていただけますか?」

「エマが近くにいるの!?」

「ええ。100年前と変わらず、この近くの地下牢で眠っておられます」

カルロは教会の扉を開けて月を見上げると、闇に光る月のように微笑み、わたしにその真っ白くて小さな手を差し伸べた。

「さ、エマ様のもとへ……!」

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