ヴァンパイア†KISS
カタンとナイフを置く音がして、

「神藤社長、今夜はこれで失礼します」

と、デュオが立ち上がり、ドアへと歩き出した。

「デュオ、和希のことなら気にしなくていい。和希はまだ君達が我が社にとってどれだけ大切な存在か理解できていないのだ」

神藤社長の態度には余裕があった。

デュオは立ち止まると、首だけをこちらに向け、

「いえ、ヴァンパイアのことを理解しろというほうが無理でしょう。ヴァンパイアが世に知れ渡った100年前、何が起こったかあなたも知っているはずだ。私は、人間に理解など求めてはいない。ただ、双方が互いの領域を侵さない世界、それを望んでいるだけだ」

そう言ってドアへと歩きだすデュオを追うようにルシアが駆け寄っていく。

「それに」

デュオはドアに手をかけながら、皮肉げに微笑んで言った。

「人間の食事はあまり口に合わなくてね」




わたしは部屋にもどってもデュオのことばかり考えていた。

人間に理解してもらおうとは思っていないと言ったデュオの言葉は、なんだか切なくて、胸にズシンと重くのしかかるようだった。

半分人間のわたしは、デュオにはどう映っているんだろう……?

中途半端な自分が、とても苦しくて、もどかしい。

ベッドに横になりながらわたしは何度も寝返りを打った。

「だめだ!」

わたしはガバっと起き上がると、我慢しきれず部屋を飛び出した。

……デュオは、3階の部屋にいるはずだ…。

ルシアが一緒にいたとしても、どうしても会いたいと思う自分がバカみたいだと思いながら……。


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