ヴァンパイア†KISS
翌日。

｢花恋様、掃除ならわたくしどもがやりますので！｣

掃除婦さんが慌ててリビングに入ってくる。

朝食が終わりかずちゃんを会社に送り出したわたしは、リビングの掃除をしようと掃除機を引っ張り出していた。

｢いいんです。掃除くらいしないと体がなまっちゃうし、わたし、花嫁修業に来ているんですよ｣

｢花恋様にそんなことさせたら旦那様に叱られます！この家では掃除はわたくしたちの仕事ですから｣

そう言うとかなり年輩の掃除婦さんはわたしから掃除機をぶんどりリビングを出て行った。

｢なんのためにここに来てるんだか、わからないや｣

わたしは一人になったリビングでため息をついた。

その時、クスクスという可愛らしい笑い声が聞こえてきた。

｢カレンさんも大変ね。人間の結婚っていろいろ気を遣うらしいし｣

｢…ルシア…さん｣

振り向くとリビングの入り口にルシアが楽しそうに微笑みを浮かべて立っていた。

｢ルシアでいいわ、カレン。ちょっとお話があるのだけど、いいかしら？｣

ルシアはそう言うと、３階の自分の部屋へとわたしを促した。

ルシア……。

１０日ほど一緒に暮らしているけれど、ほとんど会話をしたことはなかった。

なんだか話しかけづらい雰囲気で、ルシアも話しかけてこようとはしなかったから。

どう見ても人間嫌いに見えるルシアがわたしを部屋に呼ぶなんてどういう意図があるのか。

ルシアの思惑がわからなくて部屋に入ることに躊躇いを感じながら、わたしは彼女の部屋へと入っていった。







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