ヴァンパイア†KISS
かずちゃんが仕事から帰ってきた夕食前の時間。

わたしはかずちゃんの部屋のドアの前に立っていた。

かずちゃん、わたしがヴァンパイアだって知って傷ついているよね。

朝もわたしと顔を合わせずに仕事に行ってしまったかずちゃんの気持ちを思うと、胸が痛んだ。

わたしが悪いんだ。

デュオのこと好きなのに、自分を騙すようにかずちゃんと婚約したわたしが……。

わたしはかずちゃんに本当の気持ちを打ち明けて謝らなければいけないと、このドアの前まで来ていた。

……婚約を破棄してもらおう。

勝手だけど、こんな気持ちでかずちゃんと結婚できない……!

ドアをノックすると、少し間を置いてかずちゃんがゆっくりとドアを開けた。

かずちゃんはわたしを見ても表情を変えずに「入って」そう言って中へ通してくれた。

かずちゃんの部屋にはこの家に来てから何度か入っていた。

とてもシンプルで家具も少なくすっきりとしていて、かずちゃんらしかった。

かずちゃんはよくわたしをベッドに座らせて自分は椅子に座って、いろいろな話をしてくれた。

とても紳士的でわたしの嫌がるようなことは決してしない。

わたしは……その優しさに甘えていた。

ごめんね、かずちゃん。

いつものようにベッドに座ったわたしをかずちゃんは無言で見つめていた。

緊張する……。

でも、言わなくちゃ……!

「か、かずちゃん、わたしね……」

「…花恋は、ヴァンパイアなんかじゃ、ないよね?」

「え?」

かずちゃんは真剣な表情でゆっくりと椅子から立ち上がった。

いつもの優しいかずちゃんとは違って、少し凄みのある表情でわたしに近づいてくるかずちゃんにわたしの体は竦んだ。

「……かずちゃん?」





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