ヴァンパイア†KISS
シエルはルシアに向き直り、太陽のような笑顔で答えた。

「僕は見た目は子供だけど、母さんの体内で100年も生きていた。心は大人なつもりだよ」

「……でも女性を抱いたことはない。あなたのオーラからは女性から得るエクスタシーを感じないもの」

シエルは苦笑するように肩をすくめる。

「確かに。カレンにずっと振られ続けているからね」

「…そ」

ルシアはわたしの名を聞くと忌々しいというようにこの場を去ろうとした。

「待って、ルシア」

シエルがルシアに手を差し伸べながら、顔いっぱいの笑顔を浮かべた。

「君は他の女性たちと違う。気が強くて月のようにミステリアスで。デュオ兄さんを心から愛している。僕は愛の強い女性が好きだ。……僕に、愛を教えてくれませんか?」

シエル……!!

ルシアは振り向いてシエルをじっと見つめる。

そしてミステリアスに微笑むとシエルの手をとった。

「いいわ。わたくしのお兄様への愛を教えてあげる」

二人はそのまま手を取りあいながら広間の外へと消えていった。

呆然と見つめるわたしの肩をエマが叩いた。

「シエルもこれで少しは大人になりそうね。ヴァンパイアは女性を抱いて一人前だもの」

「い、いいのかな?こんな……」

「いいのよ。これであなたも肩の荷が下りたでしょう?ほとんどのヴァンパイアにとって寝るなんて行為はただのエクスタシーの交換に過ぎないの。でも、ウルフは違った……。そして、彼、デュオも。あなたは素敵な人に愛されているのよ、カレン」

「エマ……」

エマはウルフの愛に思いを馳せるように微笑むと、言った。

「さぁ、行きましょう」







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